WHERE SOUND LIVES — ARTIST VOICE Vol.1 “リトル清原”

WHERE SOUND LIVES— ARTIST VOICE

20年、音を運んできた。
リトル清原に聞く、現場が教えてくれた音のほんとうのこと

この記事で紹介しているスピーカー

Electro-Voice ZLX-12-G2

  • ベストセラーZLXシリーズ第2世代。最大SPL・周波数特性ともに向上
  • Dynacord DSPパワーアンプとの組み合わせで最大パフォーマンスを発揮
  • SONICUE対応。アプリからスピーカー設定をコントロール可能
耐入力(連続/ピーク)250W / 1,000W
最大SPL125dB @ 1m
周波数特性69Hz–18.5kHz
感度93dB 1W/1m
指向角90° × 60°
重量14.26kg

Electro-Voice ZLX-8-G2

  • ZLX-G2シリーズの8インチパッシブモデル。ZLX-12-G2と同シリーズで音の傾向が統一されバランス調整がしやすい
  • Dynacord DSPパワーアンプとの組み合わせで最大限のパフォーマンスを発揮
  • SONICUE対応。最適なスピーカー設定をアプリからコントロール可能
  • コンパクトで軽量(10.15kg)。モニタースピーカーとして転がし運用にも最適
耐入力(連続/ピーク)250W / 1,000W
最大SPL124dB @ 1m
周波数特性67Hz–20kHz
感度90dB 1W/1m
指向角90° × 60°
重量10.15kg

Electro-Voice ZLX-8P-G2

  • Dynacord製デジタルミキサー内蔵。AFS(自動ハウリング抑制)、FX、ダッカー、PEQ搭載
  • Bluetooth対応・QuickSmart Mobileアプリ対応。ワイヤレスでの音源再生・設定変更が可能
  • パワードのため単体で駆動。コンセント1本あれば補助スピーカーとしてすぐ使える
  • ZLX-8-G2と同筐体サイズ。メインシステムと統一感ある外観を保てる
定格出力250W / 1,000W
最大SPL126dB @ 1m
周波数特性58Hz–20kHz
接続端子XLR/TRS×2、Hi-Z×1
指向角90° × 60°
重量10.64kg

20年前、彼は小さなアンプスピーカーを一台抱えて現場に向かっていた。音が悪ければ、自分で持っていけばいい。その一点から始まった探求が、気づけば20年になっていた。リトル清原。清原和博のそっくり芸人として知られるが、今の仕事の大半はPA音響だ。舞台に立つより、音を整える時間の方がずっと長い。それでも彼は、音響の話をするとき、どこか目が輝いている。


リトル清原

清原和博のそっくり芸人として活動を開始し、25年以上のキャリアを持つ。デビュー当初はテレビ出演を中心に活動。その後フリーとなり、全国の企業パーティー・ホテル宴会場・地方イベントを主戦場に、ものまね芸人キャスティング、司会、自分も出演、PA音響をひとりでこなすスタイルを確立した。

東京電機大学出身という理工系のバックグラウンドを持ち、約20年かけて独学と現場経験でPA音響技術を習得。現在はPA依頼が出演依頼を大幅に上回る。

近年は野外音響にも本格参入。発電機を新調し、屋外イベントへの対応も可能になった。

音が悪いなら、自分で持っていけばいい


ホテルの宴会場、企業の周年パーティー、地方のホール。全国の現場を回るうちに、リトル清原はある問題に繰り返しぶつかるようになった。会場の音響だ。用意されているはずのマイクが使い物にならない。ハウリングが止まらず、ネタの最中に音が割れる。

だったら、自分で持っていけばいい。その一点から、20年の旅が始まった。

「やっぱ音響だいたい悪いじゃないですか。ホテルでもなかなか厳しいんで。じゃあ自分で用意しようってなって」
—リトル清原氏


20年分の、買い替えと後悔と発見


最初の一台は某社の小型アンプスピーカー。ワイヤレスマイクがセットになった小さな機材で、「まず俺一人がやれればいいやっていうやつ」だった。10〜20人規模の現場なら十分こなせた。少しずつ手応えが出てきた頃、もう少し広い現場に呼ばれるようになった。するとまた足りなくなった。

次はハードオフで見つけた某社のポータブル一体型スピーカー。「片手で持てる一体型で、こんなのがあるんだって思って」。コンパクトで持ち運びがしやすく、現場に馴染みやすかった。ところが40〜50人の会場に入ると、すぐに音量の限界が来た。声が後ろまで届かない。また次を探した。

某社のポータブルPAシステムを「思い切って」購入した。一段階上の音量が出るようになり、80〜100人規模まで対応できるようになった。しかし現場はさらに広くなっていった。パワードミキサーに某社のスピーカーを組み合わせる構成へと移行したが、音量は出ても何かが物足りなかった。現場が広くなるたびに音が足りなくなり、また次を探す。その繰り返しが20年続いた。「これじゃ全然足んないな、もっとパワーのあるやつにしよう。どんどん買い替えながらグレードも上げていって、EVに行き着いた」。

STEP 01
某社 小型アンプスピーカー
ワイヤレスマイク付き。10〜20人規模に対応
STEP 02
某社 ポータブル一体型スピーカー(中古)
「片手で持てる一体型で、こんなのがあるんだって思って」。40〜50人でパワー不足を実感
STEP 03
某社 ポータブルPAシステム
「思い切って」購入。80〜100人規模まで対応するも、さらなる大型現場に限界
STEP 04
某社 パワードミキサー + 某社 スピーカー
本格的なシステムへ移行。音量は確保できたが、音質に物足りなさが残る
CURRENT
Electro-Voice ZLX-12-G2
「500ワットはどれも同じだと思ってた」──EVに変えてその認識が覆された

「500ワットはどの500ワットも同じだと思ってたんですよ、今まで。変えてみたら音圧が違う。あと見栄えもいいし、名前もかっこいいし、組んでると『いいスピーカー使ってるんですね』って言われたりするんで」
—リトル清原氏

数字では測れない差が、現場にはある。同じ500ワットと書いてあっても、音の届き方が違う。圧が違う。客席の後ろまで音が満ちる感覚が、初めてわかった瞬間だったという。「くだらないことかもしれないけど」と苦笑しながらも、音圧も、タレント仲間からの評価も、確かに変わったと言い切る。プロの音響さんにそう言われた時、20年間の買い替えがようやく報われた気がしたと語った。現在の機材構成を見ると、その現場対応力の幅広さがよくわかる。

MAIN SYSTEM
ZLX-12-G2
メインスピーカー。広い会場では複数台をパラレル接続して音場をカバーする
MONITOR / SUB
ZLX-8-G2
ZLX-8P-G2
モニター・補助スピーカーとして運用。現場規模に応じてパッシブ/パワードを使い分ける

ホームセンターのプラスチックコンテナを活用した収納・運搬スタイルも、長年の現場経験から生まれた工夫のひとつ。「積み上げられるし、車に入れるのも楽だし」。機材の持ち運びひとつにも、20年分の試行錯誤が詰まっている。


電気系の大学出身で、機械への関心は学生時代からあった。「家でアンプとかいじったりしてたんで、電気や回路の基礎知識は若い頃からあって。あとはもう現場でやりながら、仲間の音響さんに相談しながら、20年で徐々に身についてきた」。独学とはいうが、その土台には工学的なリテラシーがあった。スペック表の読み方、アンプとスピーカーの相性、インピーダンスや出力の考え方。それを実際の現場で何度も試しながら、少しずつ体に染み込ませていった。

数年前から、タレント仲間の間で「音響ならリトル清原に頼める」という認識が広まり始めた。直接依頼が届くようになり、気づけばPA担当としての仕事が、ものまね芸人としての出演依頼を上回っていた。

「音響の方が断然多い。サービスでネタやったり司会やったりもするんで、お得感があるからまた呼ばれる」
—リトル清原氏

今では自分の出番がないイベントにPA担当だけで参加することも珍しくない。機材を車に積み、会場の搬入口から一番乗りで入る。スタンドを立て、スピーカーをセッティングし、ミキサーをつなぎ、音を出す。本番が終われば、また一人で片付けて積み込む。他のタレントが楽屋で待っている間も、リトル清原は機材の前に立っている。それでも彼は誰より早く現場に入り、誰より遅く帰る。音が鳴り始める前と、音が消えた後の時間を、一人で担っている。

「誰よりも一番最初に現場に入って、誰よりも一番最後に帰る。アシスタントつけた方が全然いいんでしょうけど、そうするとまたね。俺が1〜2時間長く頑張ればいいだけだから、と思って」
 リトル清原

1〜2時間という言葉を、彼はさらっと言った。音を届けることへの責任感が、彼をその場所に引き留めている。「PA付きタレント」という立場は結果としてそうなったものだが、今では完全に自分のスタイルだ。サービスでネタをやり、司会もこなす。その言葉の裏には、呼ばれ続けるために音を妥協しないという、静かな覚悟がある。


音は、まだ先へ行ける


某社製デジタルミキサーを半年前に購入した。が、まだ本番では一度も使えていない。毎日違う現場に入り、その日その場で音を作る仕事では、新しい機材を試す余裕がない。「毎日が本番だから、失敗したらダメ。本番で練習できないし、家では環境が揃わない」。アナログミキサーは手が覚えている。フェーダーの位置、EQの感覚、とっさの判断。それをデジタルに置き換えるには、壊せる本番が必要だ。でも壊せる本番はない。アナログの即応性に慣れた現場感覚と、デジタルが開く可能性の間で、まだ答えは出ていない。それでも「設定をメモリできるようになれば、もっと細かい要望に応えられる」と前を向く。

野外音響への参入も、静かに進んでいる。これまでは「発電機がないと現場に入れなかった」という理由で断らざるを得なかった屋外の依頼が、少なくなかった。インバーター発電機を新調したことで、電源のない祭りや屋外イベントにも対応できる体制が整った。ワイヤレスマイクも高性能モデルへ更新した。混信が起きても自動でチャンネルが切り替わるシステムだ。「ワイヤレスの混信は本番中に一番怖いんで、28万でもいいかって」。金額を迷わなかったのは、現場でその怖さを知っているからだ。

「自分のネタは全く磨いてないです。毎晩布団の中でスマホで音響機材調べて。楽しくてしょうがないんですよね、ほんとに」
 リトル清原

20年前、一台の小さなスピーカーを抱えて現場に向かった男は、今も同じように機材を担いで、次の現場へ向かっている。変わったのは機材だけじゃない。音に向き合う深さが、変わった。

リトル清原氏が歩んできた道は、「音響に詳しいタレント」という枠を超えている。出演者として、PA担当として、そして司会として…一人で現場を回しながら、音への探求を続ける。それが彼のスタイルだ。

20年、音を運んできた。それは機材を運んだ歴史であり、音への問いを積み重ねた時間でもある。リトル清原が現場に持ち込むのは、スピーカーだけじゃない。20年分の耳と、経験だ。


「音圧が違う。あと見栄えもいいし、名前もかっこいいし、組んでると『いいスピーカー使ってるんですね』って言われたりするんで」— リトル清原