INSIDE THE GARAGE #1 -ULTRASONE独自技術「S-LOGIC」とは?-
INSIDE THE GARAGE
製品の内側にある、技術と想いの話
ULTRASONE / TECHNOLOGY
ULTRASONE独自技術「S-LOGIC」とは?

― 人間の耳までを音響システムとして考える
ヘッドホンの音を決めるものは何でしょうか。
ドライバーの素材や口径、ハウジングの構造、イヤーパッド、ケーブル。もちろん、そのすべてが音に関わっています。
しかしULTRASONEは、長年にわたってもうひとつの非常にシンプルな問いに向き合ってきました。
「ドライバーは、耳に対してどこに配置するべきなのか?」
その問いから生まれたULTRASONE独自の音響技術が、S-LOGIC(エス・ロジック)です。
新しいSignatureシリーズでは、S-LOGIC 5が採用されています。
今回は発売を前に、ULTRASONEのサウンドを理解するうえで欠かすことのできないS-LOGICについて、その仕組みと狙い、そしてS-LOGIC 5で何が進化したのかを紐解いてみたいと思います。
さらに、新しいSignatureシリーズで大きく進化した装着性を支えるFGCテクノロジーについてもご紹介します。
私たちは「耳の穴」だけで音を聴いているわけではない
普段、スピーカーから音楽を聴くとき、スピーカーから放射された音がそのまま耳の穴へ一直線に入ってくるわけではありません。
空間を伝わってきた音は、私たちの耳介(外耳)に当たり、その複雑な形状によって反射や回折などの影響を受けながら耳道へと入っていきます。
この耳介によって生じる音響的な変化も、私たちが音の方向や空間を知覚するための重要な手掛かりのひとつです。
一方、一般的なヘッドホンでは、ドライバーは耳道に対して比較的正面に配置されています。
ULTRASONEが着目したのは、この違いでした。
あえてドライバーを「耳の正面」からずらす
S-LOGICの基本的な特徴のひとつが、ドライバーを耳道の真正面からオフセットして配置することです。
ドライバーから出た音を耳道へ直接集中させるのではなく、耳介にも音を作用させてから耳道へ届ける。
つまり、人間が本来持っている外耳の構造を、音を聴くプロセスの一部として利用しようという考え方です。
ここで重要なのは、S-LOGICがDSPによって作られた「バーチャルサラウンド」ではないことです。
デジタル処理によって仮想的な空間を作るのではなく、ドライバーの配置をはじめとした音響的・機械的な設計によって、自然な空間表現を目指す。
非常にアナログでありながら、ULTRASONEらしい発想の技術です。

耳の形は、一人ひとり違う
ここでS-LOGICを理解するうえで、もうひとつ興味深いポイントがあります。
人間の耳介の形状には個人差があります。
耳介の大きさや角度、複雑な凹凸は人によって異なり、その形状によって音の反射や回折の仕方も変化します。
つまり私たちは普段から、「自分自身の耳の形」も使って空間を知覚しているということです。

S-LOGICが興味深いのは、この耳介を避けるのではなく、音を聴くプロセスの一部として積極的に利用しようとしていることです。
そのため、S-LOGICによる空間表現についても、感じ方には個人差が生じる可能性があります。
同じヘッドホン、同じ楽曲を聴いていても、音像の位置や奥行き、広がりをどのように感じるかが、すべての人で完全に同じとは限りません。
だからこそS-LOGICは、説明やスペックだけで判断するのではなく、実際に装着して「自分の耳ではどう聞こえるのか」を確かめていただきたい技術でもあります。
S-LOGICが目指す「空間」とは
ヘッドホンを聴いて、
「音が頭の中で鳴っている」
と感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。
左右の違いは分かっても、スピーカーで聴くときのような前後方向や奥行き、楽器同士の位置関係を感じにくい場合があります。
S-LOGICが目指しているのは、単純に「音場を大きく広げる」ことだけではありません。
耳介を介した音の伝わり方を利用することで、
ボーカルはどこにいるのか。
楽器はどの位置にあるのか。
前後の距離感はどうなっているのか。
複雑なアレンジの中で、それぞれの音がどう配置されているのか。
そうした空間的な情報を、より自然に捉えられるようにすることを狙っています。
S-LOGIC 5では何が変わったのか?
新しいSignatureシリーズに採用された S-LOGIC 5 でも、「ドライバーを耳道の真正面からずらし、耳介を利用する」という基本思想は受け継がれています。
ただしS-LOGIC 5は、単純にドライバーの位置だけを調整した技術ではありません。
ULTRASONEはS-LOGIC 5を構成する要素として、
- Driver Placement(ドライバー配置)
- Internal Wiring(内部配線)
- Earpad Geometry(イヤーパッド形状)
- Acoustic Volume Around the Ear(耳の周囲の音響容積)
を挙げています。
つまりS-LOGIC 5では、これらを個別に考えるのではなく、ひとつの音響システムとして総合的に設計しているということです。

中でも興味深いのが、内部配線までS-LOGIC 5の設計要素に含まれていることです。
新しいSignatureシリーズは片出しケーブル構造ですが、ULTRASONEは左右チャンネルの内部信号経路についても慎重にマッチングしていると説明しています。
つまり、外から見えるドライバーの位置だけではなく、ヘッドホン内部で信号が左右へどのように伝わるのかという部分まで含めて設計しているわけです。
さらに、イヤーパッドの形状や、イヤーパッドとハウジングによって形成される耳の周囲の音響容積もS-LOGIC 5を構成する重要な要素です。
ここでいう音響容積は、単純な「ハウジング背面のチャンバー」という意味ではありません。
耳の周囲にどのような空間が形成されるのかまで含めて、ドライバー配置やイヤーパッド形状などと組み合わせ、システム全体として設計されています。
S-LOGIC 5は、単に「音場を広げる」ための技術というより、
左右の整合性、センターイメージ、音像定位、そして空間全体の再現性を高めるための総合的な音響設計
として捉えた方が、その考え方を理解しやすいでしょう。
同じS-LOGIC 5でも、同じ音ではない
新しいSignatureシリーズ、
- Signature QUANTUM
- Signature MASTER PRO
- Signature AERO
- Signature RAYVO
には、いずれもS-LOGIC 5が採用されています。
しかし、同じS-LOGIC 5を搭載しているからといって、4モデルが同じ音になるわけではありません。
ドライバーやハウジング構造、開放型/密閉型の違い、イヤーパッド、そして各モデルのチューニングによって、それぞれ異なるサウンドキャラクターを持っています。
S-LOGIC 5は「すべてのモデルを同じ音にする技術」ではなく、
それぞれのモデルが持つサウンドを、どのような空間の中で、どのような位置関係で耳へ届けるのか。
その部分を支えるULTRASONE独自の音響技術と考えると分かりやすいでしょう。
もうひとつの大きな進化「FGCテクノロジー」
新しいSignatureシリーズを実際に装着して、非常に大きな進化を感じたのがヘッドバンドのフィット感です。
従来のSignatureシリーズと比較しても、装着感は圧倒的に良くなったと感じます。
そのポイントのひとつが、新しいヘッドバンドに採用された FGCテクノロジー です。
FGCは Fontanella Gap for Comfort の略で、頭頂部の中央に意図的なギャップを設けた構造です。
一般的なヘッドバンドでは、頭頂部の中央付近に荷重が集中しやすく、長時間使用するとその部分が気になることがあります。
FGCでは中央部分への集中的な圧力を避けることで、頭部の敏感な部分への負担を軽減し、長時間使用時の快適性向上を狙っています。
単純にクッションを厚くするのではなく、
「どこに圧力をかけないか」
という発想で装着感を設計している点が特徴です。

また、新しいSignatureシリーズでは通気性を考慮した素材なども採用され、長時間のリスニングや音楽制作での使用も意識されています。
S-LOGIC 5が「耳とドライバーの関係」を設計する技術だとすれば、FGCは「ヘッドホンと頭の接触」を設計する技術と言えるかもしれません。
両者は別の技術ですが、新しいSignatureシリーズでは、音響性能だけでなく実際に長時間装着して使う道具としての完成度も大きく見直されています。
S-LOGICを聴くなら、「音質」だけを聴かない
もし新しいSignatureシリーズを試聴する機会があれば、低音が多い・高音がきれい、といった一般的な音質評価だけでなく、ぜひ音がどこにあるのかにも注目してみてください。
ボーカルはどこにいるのか。
楽器はどの位置にあるのか。
前後の距離を感じるか。
ライブ音源なら、会場の広さをどう感じるか。
そして何より、
「自分の耳では、どう聞こえるのか」
を確認してみてください。
耳の形そのものを音響システムの一部として利用するS-LOGICだからこそ、実際に装着して聴くことに意味があります。
発売をお待ちいただいている皆さまへ
新しいULTRASONE Signatureシリーズについては、当初ご案内していた予定より発売が遅れており、楽しみにお待ちいただいている皆さまには申し訳ございません。
今回の記事では、製品の発売をお待ちいただいている間に、少しでも新しいSignatureシリーズの背景にある技術を知っていただければと思い、S-LOGIC 5とFGCテクノロジーをご紹介しました。
発売まで今しばらくお待たせいたしますが、発売前にも店頭での先行試聴や展示会・イベントなど、新しいSignatureシリーズを実際にお試しいただける機会をご用意しています。
この記事をひとつの予備知識として、ぜひ発売前の店頭や展示会・イベントなどで実機を手に取り、S-LOGIC 5による空間表現と、FGCテクノロジーによって進化した装着感をご自身でお確かめください。
そして発売を、もう少しだけ楽しみにお待ちいただければ幸いです。